■music freak magazine Vol.102 2003年5月号

昨年7月に「beginning dream」でデビューした菅崎茜。グルーヴ感溢れるオーガニックなサウンドに、13才とは思えぬ大人びた表現力豊かなヴォーカルに注目が集まり、FM局のパワー・プレイを獲得したり、リミックスがクラブでヘビー・ローテーションされたりと、関西のミュージック・シーンで注目となっていた。12月には2ndシングル「君の名前呼ぶだけで」をリリースし5月28日には3rdシングル「恋ごころ」を発表する。2003年1月7日に14才の誕生日を迎えた彼女、今作で一体どんな姿へと成長しているのだろうか。


●今までの菅崎茜の2作品はグルーヴ感を漂わせたミディアム・チューンとなっていたが、今作「恋ごころ」は、初のバラード。切々と流れるメロディに、ファルセットを駆使したヴォーカリゼーションが、痛いほど相手を想う恋ごころを伝える叙情的な作品へと仕上がった。2度は会えないであろう、離れて行く相手への切ない想いを胸に抱いた女の子が佇んでいる姿が浮かび上がる、夕暮れの情景を効果的に使用した歌詞になっている。
●「曲を聴いて最初に浮かんだのが"空"。雲のない快晴から次第に雲が出てきて、そして夕方になっていくっていう流れがあって。その情景やサウンドからも切ない歌詞を書きたかったんですけど、歌詞に書いている恋愛っていうのは実はまだ良く分からなくって(笑)。私自身は何度か引越しをしているので、その時に何とも言えない切ない気持ちを体験しているんです。だからその切なさをモチーフに、こういうストーリーがいいなっていう憧れや想像から今回の歌詞に広げて行きました。人を好きになる事はすごくいい事だし、すごく大切な事だと思うんです。それが一番伝えたかった事ですね。」
●この歌詞は離ればなれになる完全な片想いが描かれている。しかもこの先に2人の未来はない・・・というか、また会えるといった希望的な言葉は記されていない。でも菅崎がこだわったのは"別れ"ではなく"離れていく"という事。2度とは会えないかもしれないけれど、2人に訪れたのは"別れ"ではないのだ。引越しや進学など物理的な状況で離れてしまう事はあるし、それを期に勇気を出して告白できる人もいる。でもこの歌詞の主人公は"誰にも話せない こんな秘密を 心の奥に隠したまま育てていきたくて"と、打ち明けずに想いを大事にしながら、明日へと向かおうとしている。同世代の子にも聴いてほしいという菅崎が綴る、10代ならすぐそこに存在する切ない片想い。でも恋は繊細なもの。大人になっても、言い出せない方もたくさんいるだろうから、どの世代が聴いても胸がキュンとなるラブ・バラードであるとも言える。そんな切なさをより一層際立たせるのが、大人びたクールなヴォーカル。巧みに駆使したファルセット・ヴォイスが更に歌詞の世界を広げている。
●「初めて歌った時から自然とこういうヴォーカルでした。バラードは声がはっきり聴こえるので、サビよりもどちらかと言うとゆったりしたA・Bメロの方が難しかったです。レコーディングは2月末から3月にかけて行ったんですけど、花粉症で思い通りに歌えなかった時もあって、みんなに迷惑を掛けたので、改めて体調管理の大切さを感じたし、出来上がった時はすごい達成感がありました」
●ちなみにこの曲は、人気漫画「探偵学園Q」がアニメ化され、そのエンディングテーマとして既にオンエアされているが、同世代に人気があるアニメで流れているので、きっと感激もひと潮のはず。感想を聞いてみた。
●「TVで流れたのを聴いた時は、嬉しい反面すごく恥ずかしくて、あまり見られなかったんです。私からは言わないんですけど、学校でもみんながTV見たよとかCMで流れてたよとか、色々言ってくれて。でも恥ずかしいから「この話やめよう」って切り上げてしまいます(笑)」
●まだまだ初々しさが残る彼女だが、それでも3作目となる今作を作り終えて
●「1、2枚目は13才、この3枚目は14才で、どちらも私だけど、少しだけ大人になったかなって思ってるので、今の菅崎茜を感じて貰えれば」
●と、進化しながら創作している事を自分でも実感している様子。カップリング「ボーイフレンド」は、「恋ごころ」と同じく"離ればなれになっていく2人"が描かれている。こちらは雨のシチュエーションを上手く描いている。
●「アイアイ傘している人がいるじゃないですか。すごく見てしまうんですけど(笑)、あぁやってアイアイ傘していても、離れていったらどうするのかなって。けっこう私の周りはそういう考え方で、変に予測してたりして(笑)。だから曲を聴いて雨が浮かんだので、離れていくってイメージにすぐ繋がりました。」
●両曲とも何かしらの事情で離れていくシチュエーションとなっているが、それは今年中学3年
になった彼女だからこそ、いつも誰かと"離れてしまう"といった思いがあるのかもしれない。
●「まだ一学期だから分からないけど、3学期になるとみんな離れていくし、また切なさがアップするんでしょうね。でもそういう気持ちから卒業式にも合う歌詞も書いてみたいですね。冬休みから現在まで、アルバムに向けてレコーディングしているんですけど、その中でいつも友達と過ごしている本当の1日と、今年1年こうやって過ごしたいって気持ちを綴った歌詞を書いたんです。実話は恥ずかしいから描けなかったんですけど、徐々にですけどリアルな歌詞も書けるようになって。やっぱり同世代の子にも聴いて欲しいですから」
●中学3年という事で平日は受験勉強、休日はレコーディングとハード・スケジュールを送っている彼女。でも、学校生活で得た様々な事が作品へと影響を与えていることがコメントからも伺える。そんな菅崎が一番楽しみにしているのが友達とのおしゃべり。その話の中にもアンテナを張ってストーリーを探し、歌詞へのキッカケを作っているそう。
最後に夢は?と聞くと
●「ミリオン!今日も英語の授業でミリオンって習って、もう頭から離れなくて(笑)」
●と、勢いよく答えてくれた。「恋ごころ」で一番好きなフレーズを"君の前で泣けなくて口笛を吹いている"と言い、過去の引越しでどんなに別れが辛くても"人前で泣いた事はないです"ときっぱり言い切る彼女。そんなキャラクターや話から、より多くの人に聴いて貰おうと人一倍努力している姿が、見せなくても伝わってくる気がする。だからより一層未知なる可能性が秘められている女性だと感じてしまう。